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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
そして太助夫婦は十数年来の天野の腹心の家来で(太助はもと会社の小使、お芳はもと高輪の方の邸の女中であった)外部へは協力して冬子をかばっていたが、同じ協力の力は、「御新造様、御新造様」と礼儀と親愛をもって傅く裏に、絶えず「天野の代り」となって厳しい監視と干渉を固持するのである。恐らく冬子が天野を愛しているように天野は冬子を愛するのであろう。ただ天野の愛は同時に絶対的な支配を要求することである。冬子は捕えられて飼われる小鳥のように、生活には困らないが、しかし不自由で、真に孤独で、「道具扱い」をされていた。平一郎は、天野の来ない夜、はじめて見た東京の市街の話や、故郷の話、お光のことを語りながら、懐かしさに夜の更けるのを知らなかった。平一郎は冬子がやはり昔のように美しくて、気稟があって、荘厳で、淋しそうであるのにどんなに悦んだかしれない。そして、平一郎は(冬子も)、もっと寛やかに、意識を渾一にして話したくてならなかったが、しかし何故かそれをさせない、冬子との話にある隔たりを強いる「無言の意志」が家一杯に充満しているように考えられてならなかった。「汝等は自分の奴隷である。