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ちていせんしゃのかいじん

地底戦車の怪人

海野 十三

「ラヂオ子供の時間」(「地底戦車兵の冒険」のタイトルで。)1940(昭和15)年2月~

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,000 字 · 111 页

青空文庫

しっかりしろ。気をしずめなくちゃ……」

パイ軍曹はだしぬけにピートが、さわぎだしたもので、これまた、心臓が破裂したようなおどろき方だった。

「軍曹どの。奇蹟です。大奇蹟です」

「なんじゃ、奇蹟とは」

「あり得ないことが起ったのです。ほら、この林檎です。自分の足許へ、ころころと転がってきました。この林檎がですよ」

「あっ。林檎だ! こっちへ、よこせ」

「だめです。自分が見つけたんです」

「一寸見せろ。この林檎は、どこにあったのか」

「軍曹どの、半分ずつ食べることにしましょう。自分にも、残してください」

「食べるのは後まわしだ。おいピート、この林檎は、喰いかけだぞ。お前、早い所、やったな」

「いいえ、うそです。自分は、まだ一口も、やりません」

「それは、ほんとか。ほら見ろ。ここのところに歯型がついている。お前が、かじらなければ、誰が、ここのところを、かじったんだ」

「さあ? とにかく、まだ自分は、決してかじりません」

「じゃあ、いよいよこれはへんだぞ。お前がかじらず、おれがかじらないとすれば、この生々しい林檎のうえについている歯型は、一体、だれがつけたんだろう?」

二人は、ぞーっとして、互いに顔を見合せた。