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じごくかいどう
地獄街道
海野 十三
「モダン日本」1933(昭和8)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页
1
銀座の舗道から、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに吃驚するほどの見窄らしい門があった。
「おお、此処だ――」
と辻永がステッキを揚げて、後から跟いてくる私に注意を与えた。
「ム――」
まるで地酒を作る田舎家についている形ばかりの門と選ぶところがなかった。
「さア、入ってみよう」
辻永は麦藁帽子をヒョイと取って門衛に挨拶をすると、スタコラ足を早めていった。私も彼の後から急いだけれど、レールなどが矢鱈に敷きまわしてあって、思うように歩けなかった。そして辻永の姿を見失ってしまった。
私は探偵小説家だ。辻永は私立探偵だった。
だから二人は知り合ってから、まだ一年と経たないのに十年来の知己よりも親しく見えた。それはどっちも探偵趣味に生くる者同士だったからであった。しかし正直のところ辻永は私よりもずっと頭脳がよかった。彼は私を事件にひっぱりだしては、頭脳の働きについて挑戦するのを好んだ。それは彼の悪癖だと気にかけまいとするが、時には何か深い企みでもあるのではないかと思うことさえあった。
「オーイ。こっちだア――」
思いがけない方角から、辻永の声がした。