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じごくかいどう

地獄街道

海野 十三

「モダン日本」1933(昭和8)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页

青空文庫

ビール会社では、こんな青年の屍体が、どうして箱の中に入っていたか判らないと弁明した。その工場の内部を隅々まで調べてみたが、そんな青年達の忍びこんでいたような形跡は一向見当らなかった。ビール瓶に藁筒を被して自動的に箱につめる大きな器械がある。これは昼となく夜となく二十四時間ぶっとおしで運転しているもので停めたことはないものだが、それをワザワザ停めても調べてみた。その結果もなんの得るところが無かった。

事件はそのまま迷宮へ入った――というのが箱詰屍体事件のあらましである。

2

「ビール会社へ行ってみようよ」

辻永はそういうが早いか、駅の門の方へスタスタ歩きだした。私は依然お伴である。

円タクを値切って八十銭出した距離に、そのビール会社の雲をつくような高い建物があった。古い煉瓦積みの壁体には夕陽が燃え立つように当っていた。遥かな屋根の上には、風受けの翼をひろげた太い煙筒が、中世紀の騎士の化物のような恰好をして天空を支えているのであった。その高い窓へ、地上に積んだ石炭を搬びこむらしい吊り籠が、適当の間隔を保って一イ二ウ三イ……相当の数、ブラブラ揺れながら動いてゆく。