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じしんざっかん
地震雑感
寺田 寅彦
「大正大震災誌」1924(大正13)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,030 字 · 10 页
地殻の物理学あるいは地球物理学の問題となって来るのである。
地震の源因を追究して現象の心核に触れるがためには、結局ここまで行かなければならないはずだと思われる。地球の物理を明らかにしないで地震や火山の現象のみの研究をするのは、事によると、人体の生理を明らかにせずして単に皮膚の吹出物だけを研究しようとするようなものかもしれない。地震の根本的研究はすなわち地球特に地殻の研究という事になる。本当の地震学はこれを地球物理学の一章として見た時に始めて成立するものではあるまいか。
地殻の構造について吾人の既に知り得たところは甚だ少ない。重力分布や垂直線偏差から推測さるるイソスタシーの状態、地殻潮汐や地震伝播の状況から推定さるる弾性分布などがわずかにやや信ずべき条項を与えているに過ぎない。かくのごとく直接観測し得らるべき与件の僅少な問題にたいしては種々の学説や仮説が可能であり、また必要でもある。ウェーゲナーの大陸漂移説や、最近ジョリーの提出した、放射能性物質の熱によって地質学的輪廻変化を説明する仮説のごときも、あながち単なる科学的ロマンスとして捨つべきものでないと思われる。