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うもれたにほん

埋もれた日本

和辻 哲郎

――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,399 字 · 43 页

青空文庫

そういう民衆にとっては、キリストの十字架の物語は、決して理解し難いものではなかったであろう。

民衆のなかに右のような思想が動いていたとして、次に第二に、新興武士階級においてはどうであったであろうか。

新興武士階級も武力をもって権力を握ろうとする点において旧来の武士階級と異なったものではないが、しかし応仁以前の伝統的な武家とは一つの点においてはっきりと違うのである。それは旧来の武家が伝統の上に立っていたのに対して、新しい武家が実力の上に立っているという点である。鎌倉時代の幕府政治を作り出した武家は、「源氏」というごとき由緒の上に立っていた。武家の棟梁とその家人との関係が、全国的な武士階級の組織の脊梁であった。そうして初めは、彼らの武力による治安維持の努力が実際に目に見える功績であった。しかし後にはただ特権階級として、伝統の特権によって民衆の上に立っていたのである。しかし民衆運動が勃興して後には、由緒の代わりに実力が物をいうようになった。単なる家柄の代わりに実際の統率力や民衆を治める力が必要となったのである。だから政治的才能の優れた統率者が、いわゆる「群雄」