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うもれたにほん

埋もれた日本

和辻 哲郎

――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,399 字 · 43 页

青空文庫

その結果、大将は、智謀を軽んじ、武勇の士をことごとく失ってしまうことになる。なぜかと言えば、侍のうち、「剛強にして分別才覚ある男」は、上の部であるが二%にすぎず、「剛にして機のきいたる男」は、中の部であるが六%にすぎず、「武辺の手柄を望み、一道にすく男」は、下の部であっても一二%にすぎず、あと八〇%は「人並みの男」に過ぎないのであるが、強すぎた大将の下では、上中下の二〇%の武士を戦死させ、人並みの猿侍のみが残ることになるからである。こういう場合には、八〇%が残っていても、全滅と変わりはない。

以上の四類型は国を滅ぼす大将の類型であるが、それによって理想の大将の類型が逆に押し出されてくる。それは賢明な、道義的性格のしっかりとした、仁慈に富んだ人物である。そこには古来の正直・慈悲・智慧の理想が有力に働いているが、特に「人を見る明」についての力説が目立っているように思われる。うぬぼれや虚栄心や猜みなどのような私心を去らなくては、この「明」は得られないのであるが、ひとたび大将がこの明を得れば、彼の率いる武士団は、強剛不壊のものになってくる。ということは、道義的性格の尊重が彼の武士団を支配するということなのである。