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しおをのせたふね

塩を載せた船

小川 未明

「童話」1923(大正12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,881 字 · 12 页

青空文庫

太陽は、やがて西に傾きかかっています。その日の光をながめて、ぼんやりと思案にふけっていますと、太陽は、にこやかな円い顔をして、

「いつまでも、こんな人情のない町にいたのではしかたがない。早く、日の暮れないうちに、ほかの町へいったほうがいい。」と、諭しているように思われました。

男の乞食は、自分たちに、不人情であった町をうらめしそうに、幾たびも見かえりながら、疲れた足をひきずって、とぼとぼと、また遠い道を歩いて、ほかの町をさしていったのであります。

それから三日ばかりたちました。ある町をあるきまわっていますときに、乞食は、三日ばかり前に自分がたってきた町が、すっかり海嘯のためにさらわれてしまった、というようなうわさを聞きました。

乞食は、夢のような気がしました。そして、あの町はどうなったろうと、りっぱな構えをした、いろいろな形をしていた家などを、目に思い浮かべたのであります。

「人間というものは、不幸にあわなければ、人情というものを悟るものでない。」と、彼は、いつか聞いた言葉を思い出しました。

「そうだ。あの不しんせつであった町の人々も、きっと思いあたったろう。