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ちり
塵
夢野 久作
「新潮 30巻3号」1933(昭和8)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,093 字 · 5 页
そのあとから白い紙キレや、藁屑や、提灯の底や、抜け毛の塊まりが、辷り転がって行く。それはちょうど普仏戦争のように、黄色い太陽の下を思い出し思い出し、追いつ追われつ、往きつ戻りつ、毎日毎日、日もすがら繰り返して止まぬ。そうして田舎の「時」を、どこまでもどこまでも無意味に、グングンと古び、白けさせて行く。
そうして、やがて夜になると、そうした塵の大群は、われもわれもと大空に匐い上って、都の光明を雲の上まで高く高く吸い上げて、夜もすがらの大火事を幻想させる一方に、愚かしい山々や森林の形を地平線上に浮き出させて、力ない、疲れ切った農民の眠りを見守らせているのだ。
塵は無形の偶像だ。
「金銀も宝石も皆塵となる」
「喜びも悲しみも皆塵となる」
と昔から言い伝えられている位だから……。
なるほど宗教も道徳も塵となった。
唯心も唯物も現在、塵となりつつ在る。
すべては、吾々の生命と共に、古ぼけた、むせっぽい、時代の塵の上に消え込みつつ在る。ことによると塵こそ造物主の正体なのかも知れない。
塵よ。塵よ。
お前は一体何をしているのか。
喜劇をやっているのか、それとも悲劇をやっているのか。