轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
「モダン日本」1939(昭和14)年7月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,485 字 · 93 页
廿日鼠は、すばやい眼差しで、ぐるりとロビイの中を見廻してから、ルーマニヤ語で、囁くように答えた。
「政変!」
竜太郎の血管の中で、熱い血が、動悸をうつ。騒擾か革命か? 現実に竜太郎が目賭した範囲だけでも、それは容易ならぬ風貌を示していた。先王ステファン五世の薨去の間もなく起こりうる政変といえば、いうまでもなくエレアーナ王女の登位を主題にしたものに相違ない。
竜太郎は、たずねた。
「……それで、……エレアーナ王女殿下は?」どうしても、ひと息では言えなかった。声が慄えていることが、じぶんでも、わかった。廿日鼠は、たまげたような眼付で、瞬間、竜太郎の顔をながめたのち、あわてて書記台の上に顔をふせると、呻くような声で、いった。
「存じませんですよ。……どうして、手前などが、そんなことを」
竜太郎の部屋は、運河に臨んだ二階の端にあった。天井の壁に、漆喰細工のキューピッドがついていて、愚鈍な顔をして下を見おろしていた。翼の金箔が剥げ、その上に点々と蠅の糞がついていた。
竜太郎は、ネクタイも解かずに、長い間、じっと寝台に腰をおろしていた。それから、上衣の内懐からそろそろと一葉の写真を取り出して、つくづく眺め入る。