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はかば
墓場
西尾 正
「真珠」探偵公論社、1947(昭和22)年11・12月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页
その夜彼は、数千年も塔の中に隠された或る種の屍体が、肥え太ったまま何故腐敗しないのであろうかと、絶え間なく自分の理論を語っているのでした。
もう一度繰り返しますが、あの夜のわれわれの目的については、別にはっきりした考えがあったわけではありません。確かに一月ほど前に印度から来た不可解な文字の綴られた古代の書、――その書をスティヴンは持参していたのですが、その内容と何か関係があったに相違ありません。
けれども、わたくしは誓って申しますが、あんなものを発見しようとは予期だにしなかったのです。あなた方の証人は、十一時半にゲンスヴィルの丘で、ビッグ・サイプレスの沼沢地に向かっていた姿を見たと言っております。これは多分ほんとうでしょう。しかし、わたくしにははっきりした記憶がないのです。わたくしのたましいに焼きつけられた光景は、たった一つの場面だけです。時は夜半を大分経ってからのことだったでしょう。というのは、虧けた三日月が漠々たる夜空に高く昇っておりましたから。
× × ×
場所は古代の墓地でした。それは蒼古の色を帯び、記憶し得ないほどの年数を経たことを証拠立てるたくさんの痕跡を見て、わたくしは慄然としました。