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はかば
墓場
西尾 正
「真珠」探偵公論社、1947(昭和22)年11・12月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页
またわたくしは自分の忠告も憶えています。友人が墓穴の淵に入って行くのに絶望的な焦燥を感じたのですが、彼はまるで感じないほど頑固なのです。もしわたくしが執拗に頑張ったならば、一度はその探検を思い止まろうとしたかも知れません。思い止まった方がよかったのです。彼が一人で妖物の鍵をつかんでから、このことがよくわかります。
われわれの探した妖物がどんな様子をしていたか、もうわたくしには知り得ないのですが、とは言えあの時のすべてを今でも覚えているのです。自分の計画にしぶしぶながら賛成したわたくしを見ると、スティヴンは電線を巻いたリールをひろい上げ、器具類を直しました。彼が肯いたのでわたくしはその一つを取り、古びた、色褪せた、たった今はがした間隙の傍らにある墓石の上に腰を下ろしました。それから彼はわたくしの手を握り、電灯を担ぐと、そのまま納骨堂の中に消えて行きました。
ちょっとの間ランプの光が見え、背後へ手繰り下ろして行く電線の音がさらさらと聞こえていました。しかしやがて、石の階段が曲がっているらしく、突然光が消え、そしてすべての音が死の沈黙の中に消え去りました。