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だんのうらのおにび
壇ノ浦の鬼火
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1927(昭和2)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页
大げんかんの前、召使いの案内、長いろうか、大広間、そして、しんといならぶ人びとの前、そこで法師は昨夜とおなじように、壇ノ浦の物語をひきました。そうして、人びとは、またも泣き、むせび、悲しみました。法師は深い感激にうたれて、寺へ帰って来ました。
すると、寺ではめくらの法師が、だれの案内もなしに寺をぬけだしていることを知りました。
つぎの朝、法師はお坊さんの前へよばれて、やさしくいいきかされました。
「えらく心配しましたぞ。めくらがひとり出をするのは、わけても夜中にでるのは、なによりあぶないことじゃ。どういうわけで、出ていくのか。わしは寺男にさんざんさがさせたのじゃ。いったいどこへいきなさるのだね。」
「これは申し上げられませぬ。てまえのかってな用事をたしにでかけたのです。どうもほかの時刻では、つごうがわるいものですから。」
法師はただそう答えました。
お坊さんは、法師のようすがあまりへんなので、これはすこしあやしい、もしかしたら悪霊にでもとりつかれたのかもしれない、と思って、それ以上は、ききただそうとしませんでした。そのかわり、ひとりの寺男に、ひそかに法師のようすを見はらせることにして、もし夜中にそとへでていくようなことがあったら、あとをつけろといいつけておきました。