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へんなおとこ

変な男

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页

青空文庫

「友人に出逢いまして……そら、こないだ私の着物を着ていった奴です。見ると、私の着物を着て澄し込んでるじゃありませんか。それで私は、着物のことであなたからさんざん小言をくったわけを、そっくり云ってやりましたよ。すると大変恐縮して、今日は少し金がはいったから、御恩返しをしようと云い出したんです。そして私を引張っていって、御馳走を食わしてくれました。私も常なら酒は飲まないんですけれど、そういう意義のある酒ならと思って、可なり飲んでやりました。それから帰りに、彼はこの菓子を買ってきて、是非あなたに上げてくれと云うんです。だから持って来ました。」

「まあ、あの方が!」と辰代は怪訝な顔をしたが、急に何やら腑に落ちたらしい様子で、「へえ左様でございましたか。それでは皆で頂くことに致しましょう。」

それでも、菓子を半分ばかり食いかけた時、彼女はふと思い出したように云った。

「そして、お召物はどうなさいましたの。」

「彼にくれてきました。」

「えっ!」

「向うでそれだけの好意を見せてくれたんですから、こちらでも好意を以て、着物は君に上げようと云ってきました。」

「まあとんでもない! だからあなたは仕様がございませんよ。