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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
、夕方までという先約の学生の返事を待たねばならないこと。
「そういうことになっておりますので……もしお宜しかったら、また夕方にいらして頂けませんでございましょうか。」
「夕方……。」と繰返して学生は可なりの間、何やら考えてる風だったが、辰代がまた口を開こうとすると、急に云い出した。「それじゃ、その人が駄目になったら、是非私に貸して下さい。朝飯だけ拵えて頂いて、午と晩とが自炊なら、丁度私に好都合なんです。四畳半で十五円、それで結構です。私は只今、苦学のような形式で勉強してるんですから、万事好都合です。よろしくお願いします。もしお差支なかったら、夕方まで此処で待たして頂けませんでしょうか、もうじきですから。どんな学生か知りませんが、朝飯だけで承知するような者はなかなかいやしません。夕方またやって来るなんて云うのは、体のいい口実です。大抵来やしません。よし来たって、断るに極っています。私の方に貸して下さい。夕方まで来なかったら、それで宜しいんでしょう。よし来たって、私が談判してやります。では此処で待つことにしますから。」
そして彼は玄関の式台に腰を下してしまった。