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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
そして辰代は、すぐに金を催促するからという彼の言葉を信じて、それで我慢していた。所が、晦日に金を取りに来た牛乳屋が、辰代の断りの言葉を聞いて、先月から滞ってるのにそれでは困ると、可なりうるさく云ってから、何と思ったか、下宿人には用心しなければ06.4.20いけないと注意して、次のような話をした。
やはり或る素人下宿屋で、大学生と称する学生を世話した所が、それが変な男で、毎日家にばかりごろごろしていて学校へ行く様子なんかはてんでなかった。訪ねてくる友人連がまた、みんな破落戸みたいな者ばかりだった。そして、やれ洋食だの鶏だの牛肉だのと、さんざん贅沢なことを云っといて、月末には五円しか金を払わなかった。次の月もやはり五円だった。三ヶ月目には一文もないと云った。余りひどいので、しまいには主人も腹を立てて、内々調べてみると、なるほど大学に籍だけはあるが、学校に出てる様子は少しもなかった。そしてまた、方々の下宿屋を食いつめた後で、もう正式の下宿屋にはいられなくなってることも分った。それから主人はうろたえ出して、その学生の持ってる品物や書物などを――不思議に書物だけは可なり多く持っていたのを――無理に売払わせて、それでも不足の金はまあ諦めをつけて、とうとう逐い払ってしまった。