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へんなおとこ

変な男

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页

青空文庫

「だって、鹿児島では川の水も海の水も澄みきってるって、さんざん話してきかしといて、勿論今ではもう濁ってるかも知れないなんて、そんな云い方があるものでしょうか。ここが少し、」と彼女は頭を指先でつっついて、「どうかしてるんじゃないでしょうか。」

「まあ馬鹿なことを云うものではありません。大学生だというではありませんか、そんなことがあるものですか。」

「大学生だって当にはならないわ。三四年も大学にいるけれど、つまらないから来年は卒業してやるんだなんて、どう考えたって少し変だわ。」

「でもねえ、それは質朴そうないい人らしいですよ。」

「だからお母さんは買い被ってるのよ、あんな質朴があるものですか。お慈悲に室を借りてやるというような見幕で、家の中にまで上り込んできて、図々しいったらありゃあしないわ。お母さんもお母さんですよ、あんな人に上り込まれといて、お菓子まで出すなんて、あんまり人が善すぎるわ。」

「そんなことを云ったって、ああいう風になったのだから、仕方がないではありませんか。」

「いくら仕方がないからって、家に上げて待たせるって法はないわ。もし先の人が来なくって、晩にでもなったらどうするの。