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へんじんでん

変人伝

佐々木 邦

「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页

青空文庫

証明が出来るか?」

「大丈夫だ」

「然ういう素人考えが一番危いんだ」

「それは念を入れるに越したことはなかろうけれど」

と竹内さんは折れたが、余り好い心持はしなかったろう。叔父は非常な潔癖だ。外から来たものは何でも消毒しないと気が済まない。手紙が来ると、レゾールをかけて乾かして持って行くのが僕の役になっていた。

「叔父さん、新聞は消毒しなくても宜いんですか?」

と訊いたら、新聞のインキにはコールターが入っているから、それでもう消毒になっていると答えた。

「弁当も外から来ますよ。何うですか?」

「馬鹿野郎!」

僕が暑中休暇に家へ帰ったら、母はツク/″\と僕の顔を見て、

「お前は何処か悪いのじゃないの? 大変瘠せましたよ」

と心配した。慣れない所為もあったろうが、無言の行と弁当生活はこれぐらい苦しかったのである。僕は叔父の日常を話して、

「叔父さんはお母さんの弟ですけれど、迚も変人ですよ」

と訴えた。母も流石に認めてくれた。しかし唯で大学へ通わせて貰うのだから辛抱する外仕方がなかった。それに贅沢を抜きにして考えて見れば、自分の為めになることだった。叔父は僕が勉強してさえいれば機嫌が好かった。