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へんじんでん
変人伝
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页
島崎さんが逃げて行った後、
「道彦、お前は島崎と二人でおれの悪口を言っていたな」
「そんなことはありません」
「いや、ある。おれはお前の将来のことまで考えていたんだが、もう見放した」
「悪口を言っていたんじゃありません。島崎さんに訊いて御覧になれば分ります」
と僕は弁解したけれど、叔父は只管思いつめていた。僕は追い出されないのが儲けものだった。叔父の靴はもう永久に諦めた。
数日後、菊池さんが来て、この問題に触れた。碁を打ちながら、叔父の感情を和げる積りだった。
「君は一口に友情がないと言うけれど、島崎だって、何うも仕様がないんだ」
「何故?」
「彼奴の家は僕や竹内のところと違って、嬶天下だ。島崎は君に地面を貸したくても、奥さんが承知しない。世の中は独身者が考えるように簡単じゃないんだ。何処の家庭にもそれ/″\事情がある」
「もう頼まないよ、あんな奴には。絶交だ」
「それじゃ困る。島崎に罪はない。嬶天下という事情に免じて堪忍してやれ」
と菊池さんは島崎夫人に責任を負わせた。会いっこないから大丈夫だと思ったのだろう。
「よし」
「分ったか?」
「うむ。その代りに君の家の庭を半分貸せ。