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へんじんでん

変人伝

佐々木 邦

「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页

青空文庫

「博士になってからでしょう」

「その問題は別として、早く貰わせる法はないだろうか? グズ/\していると、大野家の跡が絶えてしまう」

「それは私も考えていますわ。今までも度々勧めたんですけれど」

「今度は俺が出馬する。丁度好いのがあるんだ」

「女学校の先生?」

「うむ」

「安井さんじゃありませんか?」

「然うだ。この間世間話をしながらそれとなく訊いて見たら、永久に独身でいるつもりでもないらしい。三十を越しているから、お嫁さんとしては若い方じゃないが、お婿さんだってもう好い加減薹が立っている。何だか縁がありそうに思えて仕方がない」

「あなたからなら利き目があるかも知れませんわ。宜しくお頼み致しますよ」

と母は納得した。

父は国漢の先生だから、文章が得意だ。長文を認めて送った。僕は出しに行って、用心の為めに切手を三枚貼った覚えがある。しかし返事が来なかった。此方は早手廻しに写真が貰ってあったから、それを添えて、もう一遍勧めた。今度は折り返して、叔父から写真が着いた。

「到頭落城したぜ」

と言って、父が開けて見たら、此方から送った写真だった。而もインキで髭が書き入れてあった。