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なつとおじいさん
夏とおじいさん
小川 未明
「國民新聞」1931(昭和6)年7月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,207 字 · 5 页
「あんなわからずやには、罰があたればいい。」と、思っていました。ところが、おじいさんはリューマチの気味で、夏のはじめごろから、手足がよくきかなくなりました。
「とうとう、神さまが、罰をおあてなされたのだ。これからは、私どもにもやさしくしてくださるだろう。」と、雇い人たちは、いったのであります。
ところが、その反対で、体こそよく自由はきかなかったが、ますます口やかましくなって、それに自分が不自由で、思うようにならぬところから、かんしゃくを起こして、使っているものに、小言をいったのです。
それでも、みんなは、「病人だから、だまっておれ。」と、我慢をしていました。
日にまし、あつくなると、はえや蚊が、だんだん多く出てきました。はえは遠慮なく、おじいさんのはげた頭の上にとまりました。
「この畜生め。」といって、おじいさんは、うちわを頭の上にやって、はえをたたこうとしました。はえは、すばしこく逃げて、また、おじいさんがじっとしていると、頭の上にきてとまりました。
「ふといやつだ、おれをからかっているな。」と、おじいさんは、顔を赤くして怒りました。しかし、はえのことですから、怒ってみるだけで、どうすることもできません。