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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页
彼女は、それを買った。
アパートへの暗い道をいそぎながら、意味もなく頬が熱く、目がすわって、小鼻がひくひくと動くのがわかった。冷えた冬の夜の外気を深く嗅ぐと、胸がふるえてくる。ときどき、膝が萎えそうになる気もした。部屋に入り、電燈を消しすぐ横になったが、どうしても睡ることができない。……良子は、はじめて小説の中の人物のように、自分があることを積極的に欲しているのを知った。暗闇の中で、幾度も頬が燃えるように赧くなった。
真弓の帰宅は、翌日の昼近くだった。まだ、やっと寝ついたばかりだった良子を、真弓はその甲高い声で起した。
「ねえ、まだ寝てんの? 良子。あなたにプレゼントが届いてるのよ」
「いま帰ったの?」
良子は、目の泣きながら眠った痕をかくすようにこすりながら、明るい部屋の中に、真弓が正面にセロファンを貼った細長いボール箱を抱えて立っているのを見た。
「ほら、プレゼント、花束よ。すてきじゃない? ちゃんとポインセチアまでついてる」
真弓はその箱をベッドの良子に渡すと、両手を腰にあてた。
「いま、そこの廊下で花屋に逢ったんで代りに受けとったんだけど、あんた、それ、だれからのプレゼントだと思う?」