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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页

青空文庫

十二月の海岸公園には、訪れる人もあまりいない。芝生も枯れ、樹木も葉を落して、ただ海の轟音だけが、荒涼として平坦な園内に、かわらぬ鳴動をつたえている。

たった一人、眼鏡をかけた三十歳前後の男がベンチの一つに坐っている。彼は真冬の午後の海を見ている。海は灰色に澱んで、今日はやや靄が深い。まだ若い女が一人、ハイヒールの踵を鳴らしながら、ホテルのほうから舗道につづく柵を抜けて、海岸公園に入った。

男は気がつかない。砕ける波濤と海からの風のために、跫音が聞こえないのだろう。女は、まっすぐにその男のいるベンチに近づく。

「やっぱり、あなたなのね」

と、女はいった。

男は顔を上げる。が、なにもいわない。

「あなたでしょう? 私に、弘の名前で花束を送ってくださったの」

「……ぼくだ」

と、男はいった。

「ゆるしてくれ。よけいなことをしたよ」

「私、そういう意味で訊いたんじゃないの」

岸壁に白い浪の幕が伸びあがって、崩れる。

女は、男に並んでベンチに腰をかけた。

「私ね、自分で自分に花束を贈っといたの。だから、はじめはその花束が着いたんだと思ってたわ。でも、よく見たら、お店の名前が、おぼえてたのと違ってたの。