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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页

青空文庫

「あの人の家は、どこか下町のほうの大きな地主でしょ? もう相当に貯めこんでるんじゃないかな。だいいち、土地をちょっと手離せばいいのにね。べつに全員で食事まで倹約しなくても……」

「でも、土地は持ってれば持ってるほど値段が上りますよ。そこが、いかにも山口さんのお家らしいところじゃない?」

ローラーを持った同僚がいった。人びとはまた無気力な笑い声を合わせた。

ぼくは黙っていた。――やはり、それはショックだった。父が死に、家には金がなく、おまけに未帰還の夫を待つ母の妹である叔母が、五つと三つの男の子をつれて同居している。ぼくの弁当のみすぼらしさは、だから、やむをえないことだ。が、山口の家は、その気になれば、らくに闇米でも買えるだけのお金があるのらしい。では、ぼくのしていることはいったいなんだろうか? ぼくは、彼がぼくの勝手に信じこんでいたような「仲間」ではないのだと思った。金のないぼくがただでさえ貧しい弁当をわけてやって、金のある彼は、そのぼくの好意を利用しながらすっぽりと「リッパな家」におさまろうとしている。ぼくのお節介はなるほどコッケイだが、彼のやり口もずいぶん不正直でアクドイのではないだろうか?