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たしんきょう

多神教

泉 鏡花

「文藝春秋」1927(昭和2)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,787 字 · 36 页

青空文庫

さ、婦、立てい。

禰宜 立とう。

神職 許す許さんはその上じゃ。身は――思う旨がある。一度社宅から出直す。棚村は、身ととも参れ。――村の人も婦を連れて、引立てて――

村人ら、かつためらい、かつ、そそり立ち、あるいは捜し、手近きを掻取って、鍬、鋤の類、熊手、古箒など思い思いに得ものを携う。

後見 先へ立て、先へ立とう。

禰宜 箒で、そのやきもちの頬を敲くぞ、立ちませい。

お沢 (急に立って、颯と森に行く。一同面を見合すとともに追って入る。神職と仕丁は反対に社宅―舞台上には見えず、あるいは遠く萱の屋根のみ―に入る。舞台空し。落葉もせず、常夜燈の光幽に、梟。二度ばかり鳴く。)

神職 (威儀いかめしく太刀を佩き、盛装して出づ。仕丁相従い床几を提げ出づ。神職。厳に床几に掛る。傍に仕丁踞居て、棹尖に剣の輝ける一流の旗を捧ぐ。――別に老いたる仕丁。一人。一連の御幣と、幣ゆいたる榊を捧げて従う。)

お沢 (悄然として伊達巻のまま袖を合せ、裾をずらし、打うなだれつつ、村人らに囲まれ出づ。引添える禰宜の手に、獣の毛皮にて、男枕の如くしたる包一つ、怪き紐にてかがりたるを不気味らしく提げ来り、神職の足近く、どさと差置く。