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たしんきょう
多神教
泉 鏡花
「文藝春秋」1927(昭和2)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,787 字 · 36 页
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神職 神のおおせじゃ、婦、下におれ。――誰ぞ御灯をかかげい――(村人一人、燈を開く。灯にすかして)それは何だ。穿出したものか、ちびりと濡れておる。や、(足を爪立つ)蛇が絡んだな。
禰宜 身どもなればこそ、近う寄っても見ましたれ。これは大木の杉の根に、草にかくしてござりましたが、おのずから樹の雫のしたたります茂ゆえ、びしゃびしゃと濡れております。村の衆は一目見ますと、声も立てずに遁ぎょうとしました。あの、円肌で、いびつづくった、尾も頭も短う太い、むくりむくり、ぶくぶくと横にのたくりまして、毒気は人を殺すと申す、可恐く、気味の悪い、野槌という蛇そのままの形に見えました。なれども、結んだのは生蛇ではござりませぬ。この悪念でも、さすがは婦で、包を結えましたは、継合わせた蛇の脱殻でござりますわ。
神職 野槌か、ああ、聞いても忌わしい。……人目に触れても近寄らせまい巧じゃろ、企んだな。解け、解け。
禰宜 (解きつつ)山犬か、野狐か、いや、この包みました皮は、狢らしうござります。
一同目を注ぐ。お沢はうなだれ伏す。
神職 鏡――うむ、鉄輪――うむ、蝋燭――化粧道具、紅、白粉。