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たしんきょう
多神教
泉 鏡花
「文藝春秋」1927(昭和2)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,787 字 · 36 页
茨の鞭を、しゃつの白脂の臀に当てて石段から追落そう。――が呆れ果てて聞くぞ、婦。――その釘を刺した形代を、肌に当てて居睡った時の心持は、何とあった。
お沢 むずむず痒うございました。
禰宜 何じゃ藁人形をつけて……肌が痒い。つけつけと吐す事よ。これは気が変になったと見える。
お沢 いいえ、夢は地獄の針の山。――目の前に、茨に霜の降りましたような見上げる崖がありまして、上れ上れと恐しい二つの鬼に責められます。浅ましい、恥しい、裸身に、あの針のざらざら刺さるよりは、鉄棒で挫かれたいと、覚悟をしておりましたが、馬が、一頭、背後から、青い火を上げ、黒煙を立てて駈けて来て、背中へ打つかりそうになりましたので、思わず、崖へころがりますと、形代の釘でございましょう、針の山の土が、ずぶずぶと、この乳へ……脇の下へも刺りましたが、ええ、痛いのなら、うずくのなら、骨が裂けても堪えます。唯くわッと身うちがほてって、その痒いこと、むず痒さに、懐中へ手を入れて、うっかり払いましたのが、つい、こぼれて、ああ、皆さんのお目に留ったのでございます。
神職 はて、しぶとい。地獄の針の山を、痒がる土根性じゃ。