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たしんきょう

多神教

泉 鏡花

「文藝春秋」1927(昭和2)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,787 字 · 36 页

青空文庫

媛神。軽く手を拍つや、その鞍に積めるままなる蕪、太根、人参の類、おのずから解けてばらばらと左右に落つ。駒また高らかに鳴く。のりつけほうほう。――)

媛神 ほほほほ、(微笑みつつ寄りて、蘆毛の鼻頭を軽く拊つ)何だい、お前まで。(駒、高嘶きす)〔――この時、看客の笑声あるいは静まらん。然らんには、この戯曲なかば成功たるべし。〕――お沢さん、疲れたろう。乗っておいで。姥は影に添って、見送ってお上げ――人里まで。

お沢 お姫様。

巫女 もろともにお礼をば申上げます。

蘆毛は、ひとりして鰭爪軽く、お沢に行く。

丁々坊 ははは、この梟、羽を生せ。(戯れながら――熊手にかけて、白拍子の躯、藁人形、そのほか、釘、獣皮などを掻き浚う。)

巫女 さ、このお娘。――貴女様に、御挨拶申上げて……

お沢 (はっと手をつかう)お姫様。草刈、水汲いたします。お傍にいとう存じます。

媛神 (廻廊に立つ)――私の傍においでだと、一つ目のおばけに成ります、可恐い、可恐い、……それに第一、こんな事、二度とはいけません。早く帰って、そくさいにおくらし。――駒に乗るのに坐っていないで、遠慮のう。

お沢 (涙ぐみつつ)お姫様。