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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

「誰や、お前は? ……どこのどいつや」

と、隼団の一人が言った。

「僕は一介の復員兵士だ」

と、小沢は言った。

「――僕は君たちのように、龍だとか豹だとか虎だとか、親のつけた平凡な名前以外の名前を持っておらん。また、青蛇だとか、隼だとか、まるで動物園まがいの団体にも加盟しておらない」

「何ッ……? お前らの出る幕やない。引っ込んでろ」

と、一人が叫んだ。

小沢は平然として、物凄く速い口調で喋り立てた。

「なるほど、僕は出番をまちがえて、他の役者の出る幕の舞台へ飛び出した間抜け役者かも知れない。しかし、とにかく舞台へ飛び出したのだ。何とか科白を喋ってから引き下るということにしなければ、恰好がつかないし、今更引っ込みもつかない」

「じゃ、何を喋りに来たんや」

「結論を先に言おう」

と小沢はじろりと一同を見廻して、

「――喧嘩というものが、いかにくだらぬものであるかということを、君たちに納得させたいんだ」

「大きにお世話や。引っ込んだらどうや」

「まア、聴け! 日本人はかつては、暴力や喧嘩沙汰の好きな国民だった。だから戦争をおっぱじめて、こんなみじめなことになってしまったんだ。