轻松读懂日语经典作品
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页
手さぐりでもとの椅子に戻ると、小沢は濡れた服を寝巻に着更えると、眼を閉じた……。
外は相変らずの土砂降りだった。
何か焦躁の音のような、その雨の音が耳についてか、それとも……とにかく小沢はなかなか寝つかれず、いらいらしているとふっと、大きな溜息が寝台の方から聴えて来た。
娘もやはり寝つかれぬらしい。
そして、どれだけ時間がたった頃だろうか、娘はいきなり寝返りを打つと、声を掛けて来た。
「なんぜここへ来て寝ないの……?」
「えっ……?」
小沢は思わず眼をひらいて、寝台の方を見た。
暗がりで、よくは見えないが、たしかに娘はこちらの方へ顔を向けて寝ているらしい。
「…………」
娘は暫らく黙っていたが、やがてちょっとかすれた上ずった声で、
「小沢さんはあたしが嫌いなんでしょう?」
と、言った。
小沢の名を知っているのは、さっき宿帳に書く時、覗いていたからであろうが、それにしても、いきなり自分の名を云ったので、小沢はちょっと意外だった。
もっとも、この驚きには甘い喜びが、あえかにあった。
復員者の小沢は、久しく自分の名を「さん」づけで呼ばれたことはなかった、しかも若い女の口から……。