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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

星に胸の底を覗かれてしまったのだ。

「ままよ。どうせ覗かれたんだもの」

そう思って、お加代は、

「――豹吉!」

と、小さく声に出してみた。

「――豹吉!」

その言葉は、無論唖の娘には聴えなかったが、お加代はさすがその娘の手前、恥かしそうに首筋まで赧くなった。

お加代は抱いていた手にぐっと力を入れて、豹吉の想いを引寄せるように、その娘の肩を引き寄せると、

「――東京で焼け出され、大阪へ流れて来て……」

と、さっきの話を続けた。

「――馴れぬ大阪でうろうろしているところを、親切に話しかけて来たのが、あんた、誰だと想う……?」

「…………」

唖の娘には無論答えられない。

「あの針助だったのさ!」

お加代は投げ出すように云った。

「――二階を貸してやるというので、これ倖いとついて行ったら、なんと女気なしの針助の一人世帯、ちいと薄気味わるかったけど、今時空間なんて貸してくれる人は、ざらにいるわけじゃない。早速二階を借りたところが、ある夜到頭……、いえ針助は女なんかに興味のある男じゃない。何もされなかったが、その代り刺青をされてしまったのさ」

「…………」

「刺青をされるまでは、真面目なタイピストだったけど、会社でちらちら腕の青いところが見えてはもうおしまい、どこへ行っても使ってくれず、背中に背負った刺青という重荷が、到頭あたしの一生