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よなきてっこつ

夜泣き鉄骨

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,273 字 · 31 页

青空文庫

栗原は、若い横瀬から、スウィッチの箱をうけとると一人で帰って行ったのだった。

「さあ、こっちへ、入んねえ」

「はあ――」

「わしは、鳥渡、お前さんに、見て貰いてえものがあるんだ」

「俺に、判るかなァ」

「ものは、これなんだ」わしは、机の抽斗しの奥から、新聞紙にくるんだものを、出してきた。

「この硝子で出来たものはなんだね」わしは、それを横瀬に手渡した。

「これは、注射器の一部分ですよ」

「注射器? そうだろうな、わしも、そう思った。それで、何の注射器か、お前さんに判らないかい」

「さァ――」横瀬は、モシャモシャ頭髪を、指でゴシゴシ掻いた。「注射器は判るが、尖端についている針が無いから、見当がつかねえ」

「じゃ、此処んとこを見て呉れ。この注射器の底に、ほんのり茶っぽいものが附いているが、これは、なんて薬かい」

「うん、なんか附いてはいるが――」若い男は注射器を、明り窓の方に透かして、その茶色の汚点に眺め入った。「電灯は点きませんか」

「生憎、この合宿じゃ、六時にならないと、点かないんだ。まだ三十分も間があるよ」

初夏の夕方は、五時半を廻っても、まだ大分明るかった。

「さあ、わかりませんね。