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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
いやいやそれよりこうなってみれば、先ず何より自分自身の、安全を計らなければならなかった。
「戸を破るより仕方がない」そこで彼は全力を集め、裏戸へ体をぶっつけた。
途端に人声が聞こえてきた。
「こっちでござる。お入りなされ」
ギョッとして四辺を見廻すと、一筋の火光が天井から、斜に足許へ射していた。二階から来た燈火である。ぼんやりと梯子段も見えている。その梯子段の行き詰まりに、がんじょうな戸が立ててあり、それが細目にあけられた隙から火光が幽に洩れていた。
「それでは空家ではなかったのか」こう思うと彼は心強くなった。それと同時に案内も乞わず、他人の家へ入り込んだことが、申し訳なくも思われた。
「こちらへ」
という声が聞こえた。
そこで彼は階段を上った。
思わず彼はあっと云った。二階の部屋の光景が不思議を極めていたからであった。そこには十人の男がいた。一人は按摩、一人は瞽女、もう一人は琵琶師、もう一人は飴屋、更に、居合抜に扮したもの、更に独楽師に扮したもの、又は大工又は屑屋、後の二人は商人風に、縞の衣裳を着ていたが、いずれも鋭い眼光や、刀を左右に引き付けている様子で、武士であることが見て取られた。