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だいのうしゅじゅつ

大脳手術

海野 十三

「富士」1945(昭和20)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,185 字 · 31 页

青空文庫

「えっ、どこで珠子を……。詳しくいってくれ」

鳴海はびっくりして暫く私の顔を見詰めていたが、

「君を興奮させるつもりはなかったのだ。H街を彼女は歩いていたよ」

「ひとりきりか。それとも連れがあったか」

「さあ……困ったなあ」

「本当のことをいってくれ。僕は今真実を知りたいんだ。珠子は他の男と歩いていたのだろう。その男は、どんな奴だったい」

私の険しい追及が、鳴海の返答をかえって遅らせた。でも結局彼は答えた。

「別に怪しい人物ではなかったよ」

「でも……どんな男だ、其奴は……」

「君の知っている人だよ」

「じらせてはいけない。珠子の連れの男は誰だったか、早くそれをいってくれ」

「いっても差支えなかろう。瀬尾教授だ」

「なに、瀬尾教授。あの、大学の瀬尾外科の主任教授である瀬尾先生か」

「そうだ。だから君は別に興奮しないでよかったのだ」

私はしばらく沈黙していた。そしてそのあとで呟いた。

「一体珠子は瀬尾教授なんかに何の用があるんだろう」

その理由は、見当がつかなかった。しかし珠子があれ以来私に対し行方をくらまし、音信不通の状態をとっていることから考えて、たとえ相手が瀬尾教授であろうと、それと肩を並べて歩いているということは、私にとって重大問題たることを失わないのだ。