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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

「ははあ、そういうわけで、そういう人物であったのか……なるほど」

と幾度もうなずきましたが、つづいて、

「それで、机竜之助という男はいったい、いい男なのか、わるい男なのか」

「何だ、それは――」

「つまり、机竜之助は美男子であったか、それとも、醜男であったか、それを聞いているのだ」

「妙なことを聞くじゃないか」

「そこが問題だ」

「誰がそんなことを問題にしている」

「いや、それが、なかなかの大問題になったことがあるのだ」

「どうして、それをお前が……第一、机竜之助なるものの存在を、ただいま、拙者の口から初めて聞いたお前が、あの男の容貌の美醜を論ずることでさえが奇妙なのに、それが問題になっていたというのはどこで……いつのことだ。してみればお前は、その以前から竜之助なるものを知っていたのか」

「知っていたのだ……知っていたのをお前からいわれて、今になって気のついた一人だ」

「いつ、どこで」

「大和の国、十津川のあの騒ぎの時よ。実は拙者もあの時、あの乱軍の中へまぎれ込んでいたものだ……その節、たのまれて竜之助なるものの人相書を書いてやったことがある」

意外にも丸山勇仙が十津川話を持ち出して、その時、よそながら机竜之助にひっかかりのあったようなことをいう。