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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

「それでは無理におたずねは致しますまい」

とお銀様が冷やかに答えましたが、

「お前が教えてくれなくても、わたし一人で探してみせるから……」

と針をふくんでいいかえしました。しかし、この針も弁信法師の胸には立たず、

「すべての女の人は、男を畏れますけれども、あなたは男を畏れるということを知りませぬ、通例の場合では、女一人を男の前へ出すことは危険でございますが、あなたに限っては、女の前へ男を出すことがあぶないのでございます」

弁信法師一流のいい廻しで、前提を置き、言葉をついで、その註釈を述べようとする時、

「今晩は……」

とその間へハサまったのは、それは弁信の声ではありません。お銀様の挨拶でもありません。清澄の茂太郎が、自分の身体が押しつぶされるほどの夜具蒲団を荷って、お銀様のいるところへやって来たのです。

「御苦労さま」

とお銀様が言いました。

「ああ、重たかった」

夜具蒲団を頭から投げおろした茂太郎が、ホッと息をつく有様を、お銀様がつくづくとながめて、

「随分重かったでしょう、よく、これだけ持てましたね」

「随分重かったよ……どちらへお休みになりますか」

といって、茂太郎は座敷の部分を、キョロキョロみまわしますと、