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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

千隆寺の坊さんが、立川流という剣術をつかうわけでもあるまい。八百年前に起って、流行の猛烈にして弊害の甚だしきにより、禁制になったという流儀を、ここの坊主が行っているという。

二十七

立川流――の流れは、もう少し源が遠く、流れが深いはず。

しかし、たぶん今ごろは、千隆寺の境内の八葉堂の地下の秘密室では、子を求むる婦人のために、問題の祈祷がはじまったものと覚しい。

とにもかくにも、ここで、禁制の立川流を秘密に行って、男女を集めているという風聞は、もう、その筋の検挙の手を下すまでに拡がっているというのは、本当らしい。

お絹という女の好奇心をそそって、今宵その秘密の修法の席に連なることを許したはずの、この千隆寺の若い住職というのが、なかなかの曲者だ。

さあ、いよいよその秘密の伏魔殿が発かれた日になって見ると、どんな怪我人が、どこから現われて来るか、この若い住職の素性もわかってくれば、その秘法に心酔して、夜な夜なつどう婦人連の顔が明るいところへ出された時、世間をあっ! といわせるかも知れない。

七兵衛は、そんな事を考えている時、下では、呉竹の間や、稲垣の蔭や、藤棚の下や、不動堂の裏あたりから、黒い人影が幾つも、のこのこと出て来ては、松の幹の下の、以前に話し込んでいた二人の前に集まると、二人の者が