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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
薩摩屋敷のものは、このめざましい見物を見せられて盛んによろこびましたが、何ものの特志で、こうして不時に、われわれに目の正月をさせてくれるのだかわからないものが多かったのです。それからまた、一行の神楽師に対する豪傑連中のもてなしが、甚だ丁重で、いわゆる芸人風情にするものとは行き方がちがっていることを、不思議にも思いました。
これは申すまでもなく、お銀様が、武蔵と甲斐と相模あたりの山の中で、思いがけなく見せられた一団の舞踊とおなじことで、その指揮をつかさどっていたのも、今で思い合わせると、ここで高村卿と呼ばれている英気風発の公達であったに相違ない。
前にいった通り、その時分の京都の公卿さんの若手のうちには、きかないのがおりました。中山忠光卿や、姉小路公知卿や、岩倉具視卿あたりもその仲間でありましょう。ここに現われた高村卿なるものも、多分その一人であろうと思われる。
彼等の憂うるところは、徳川幕府よりはむしろ勤皇を名として勢いを作り、幕府の実権をわが手におさめようとする一二雄藩の野心である。ちょうど、足利尊氏が最初に勤皇として起り、ついに建武中興をくつがえしたように、徳川を倒すはよいが、徳川を倒した後の第二の徳川が起っては、なんにもならないではないか。