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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
竜之助のつめたい面に、抉るように微笑ののぼって来たのはその時です。
十六
山地は寒の至ることも早く、白骨の温泉では、炬燵を要するの時となりました。
この頃、男妾の浅吉は、別な心持で落着かなくなりました。
というのは、後家さんの圧迫をのがれよう、のがれようと苦しんでいた男妾が、かえって嫉妬に似た気持で、後家さんを引きつけようとあせる気色が、ありありと見え出したことです。
この二組のほかに、お客というもののない今日の白骨の全温泉で、おたがいが一家族のように親しくなるのはあたりまえで、おたがいに出入りの密になるのもあたりまえですが、後家さんが、お雪と竜之助のところへ話しに行くと、そのあとで、男妾の浅吉が、額に苦しい汗を出して、やきもき悶えはじめます。そうして、ある時は一生懸命の思いで、後家さんに向ってこういうことを言いました、
「おかみさん、うっかりあの座敷へ行ってはいけませんよ……あの久助さんや、お雪ちゃんたちと、懇意にするのはようござんすが、あの浪人者みたような人に、近寄らないようになさいまし」
そうすると、色気たっぷりの後家婆さんが、