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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
その時こそ、わたしはあのお内儀さんを憎いと思わずにはいられませんでした」
それから二三日経って、お雪はまた弁信への手紙を書き続ける。
「弁信さん――
この二三日、わたしは夢のような恐怖のうちに、暮してしまいました。
それでも毎日、近所の山へ葬られた浅吉さんのお墓参りを欠かしたことはございません。
それだのに、あのお内儀さんという人はどうでしょう。使い古しの草履を捨てるのだって、あれより思いきりよくはなれますまい。
わたしが、あのお内儀さんを憎いと思ったのは、そればかりじゃありません。昨日のことですね、二人でお湯に入っていると、わたしの身体を、あの叔母さんがつくづくと見て、
『お雪さん、あなたのお乳が黒くなっているのね』
というじゃありませんか。
その時、わたしは、乳の下へ針を刺されたように感じました。
弁信さん。
あなただから、わたしはこんなことまで書いてしまうのよ。お乳が黒くなったというのは、娘にとっては堪忍のならない針を含んでいるということを、あなたも御存じでしょうと思います。
わたし、ちっとも、そんな覚えがありません。あろうはずもないじゃありませんか。それだのに、こういう意地の悪いことをいう、叔母さんの舌には毒のあることをしみじみと感じました。