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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
しかし、どちらにしてもこうして置けば、この際、仲裁に出て、わが道庵先生の危急を救おうとするほどの勇者が現われるはずはないから、道庵はみすみす弄り殺しになってしまう。
江戸では飛ぶ鳥を飛ばした道庵ともあるべき身が、みすみす北国街道のはずれで、馬子風情の手にかかって一命を落すとは、なんぼう哀れなことではないか。
いいかげん玩弄にして、もうヘトヘトになった道庵を、裸松は手近な井戸流しのところへ引きずって来ましたが、それでも、殺すまでの気はないと見えて、そこで道庵の頭から水を一つザブリと浴びせると、そこへ引き倒して、あり合わせた切石を取って、左様、目方が十四五貫もあろうというのを軽々と持って来て、俯伏しに寝かした道庵の背中の上へ重しにかけました。
ここで気息奄々たる道庵は動きが取れない。石の重しをかけられて、首と両手と両足をもがくばかり。張子の虎のような、六蔵の亀のような形を、裸松はおかしがり、
「ザマあ見やがれ。おかげで暇つぶしをさせられた、さあ、今の三ぴん共、遠くは行くめえ……」
そうしておいて帯をしめ直し、鉢巻を巻き直して、逃げた侍のあとを追いかけようとする。