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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
しかし思い立つと留めて留まらぬ道庵ではある。米友もぜひなく莚を巻いて丹波島の渡し場まで来ました。
さて渡し舟はつなぎ捨てられてあるが、眠っている船頭を起すも気の毒。
道庵が心得顔に小声で米友をそそのかし、そっとその舟を引き出して乗る。
犀川の渡し、ここを俗に丹波川という。水勢甚だ急にして、出水のたびに渡し場が変る。水の瀬が早くて棹も立たない。たぐり縄で舟を渡す。
背の低い米友、やっとそのたぐり縄に縋りついたが、それを操ることは妙を得ている。ともかくも舟は中流に乗出す。もし、船頭が眼でも醒まそうものなら、一悶着を免れないが、幸いにその事もなく舟は向うの岸に着く。
飛び上った道庵は、月の光で朧気に立札の文字を読むと、平水の時は一人前五十文と書いてある――そこで百文の銭を取揃えて、舟板の上に並べて置いて、申しわけをしたつもり。
ほどなく権堂の町へ入るには入ったが、どことて今時分、起きている気紛れはない。二三軒、宿屋を叩いてみたけれど、起きて待遇そうという家もない。
後町から大門前まで来る。道庵先生、しきりに胴ぶるいをつづけているが、そこは負惜み、もう二時もたてば夜が明けるだろう、夜が明けたら最後、善光寺の町をひっくり返してくれよう。