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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

たしかに小さいながら人間の形をしたものがこの道標の下から飛び出して、俺の頭の上を走ったには走ったが、その姿を見ることはできなかった、しかしその足は温かい足で、長い爪があったという者がある――いや、なんだか、俺の頭の上を通ったのは泥草鞋のようだったという者もある。それが、いきなり老人に飛びつくと、老人が「済まねえ」と謝罪ったという者もあれば、謝罪ったのは飛び出して来た小者だという者もある。

しかし、幸いなことは、どちらがさらったにしても、さらわれたにしても、それは少しも土地ッ子の怪我ではないということで、誰に聞いてみても、あの頼まれもしない世話焼の親爺の何者であるかを知った者はなく、またこの道標あたりから飛び出したものの何者だか見極めた者もなく――どちらにしても氏子には、誰ひとり間違いが無かったということを喜び、結局、今のは天狗様だろうということに衆議が一決しました。

つまり、辛犬の山に棲む天狗が、今夜の祭りの興に乗じて里へ出て見たが、面白さに堪らなくなって、つい人間と共に踊り、人間と共に楽しむ気になってしまったのだ、天狗が遊びに出たのだ、それも人を迷わしに来たのではない、人間と共に楽しみに来たのだから、それは怖いことではなく、賀すべきことである、いよいよこのお祭礼の景気と瑞祥を示す所以であると解釈がつい