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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

先生、もうお厭とおっしゃっても承知しませんよ」

「なるほど、なるほど。そういうわけなら、拙者も一番、器量一杯というのをやってみましょう……そこで註文はつまり、その額面には何を描いて上げたらいいのかね?」

「先生、納める以上は、今迄のものに負けないのを納めたいと思います」

「左様――あすこにはあれで、古法眼もいれば、永徳もいるはず。容斎、嵩谷、雪旦、文晁、国芳あたりまでが轡を並べているというわけだから、その間に挟まって、勝るとも劣るところなき名乗りを揚げようというのは骨だ」

「だって、先生、できないということはありますまい」

「拙者には少々荷が勝ち過ぎているかも知れないが、拙者も同じ人間で、絵筆を握っている以上は、できないとはいわない」

「ああ嬉しい、その意気なら先生、大丈夫よ」

「ところで、画題は……何を描いて納めたいのだね、その図柄によって工夫もあるというものだ」

「先生、わたしの望みは少し変っていますのよ」

「うむ」

「わたしは、ひとつ、ぜひ、切支丹の絵を描いていただいて、納めたいと思っているのでございます」

「え、切支丹だって?」

「わたしの一世一代が、切支丹奇術の大一座というので当ったんですから、それを縁として……」