轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
30 畜生谷の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页
にならねえじゃねえか。そのくれえだから、おめえ、近頃は英雄なんていうやつが、この界隈から薬にしたくも出なくなったんだ。地形は昔に変らないんだよ、山川開けて気象頓に雄大なるこの濃尾の天地は、信長や、秀吉のうまれた時と大して変らねえのに、人間というやつが腑抜けになって、英雄豪傑の種切れだ。たまにおめえ、大塩平八郎だの、細井平洲だのという奴が出て来れば、みんな他国者に取られてしまう。なんと情けねえじゃねえか、ひとごととは思えねえよ」
こういうまくし方では、半畳を飛ばす隙もなかったと見えます。
一座があいた口が塞がらずに、道庵の面ばかりパチクリと見つめている体は、笑止千万です。
それを道庵は委細かまわずに、ぶっつづけました。
「英雄豪傑なんぞは、乱世の瘤のようなものだから、そんなものは厄介者で、いらねえと言えばそれまでだが、国に人物が出なければ、その国の精が抜けてしまった証拠なんだぜ。気の毒ながら、尾張の国も精が抜けたね、山川は昔に変らねえが、人間の方は、どうしてそう急に精分が抜けたのか――それにはまた一つの原因がある――」
この辺へ来て、はじめて道庵も、いくらか平静に返り、昂奮からさめたように、調子もいくぶん穏かになって、歴史を典拠として論じはじめました。