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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

30 畜生谷の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页

青空文庫

この久助さんを、ズッと白骨に残して置けるものならば残して置きたかったし、なおできるならば、国へ先に帰してしまいたいと思うけれども、それはどうしても、できないことだし、そんならばいっそ久助さんをもまき添えに、白川郷まで引張りこんでしまおうかしら。

それはいけない、久助さんは国へ帰ることだとばっかり思っている、わたしたちが白川郷へ行こうなんぞという気持が、全く理解のできる人ではない。こうなった以上は、途中でまいてしまうよりほかはないとも考えました。

だが、ここで、私たちにまかれた後の久助さんはどうなるのだろう。そうでなくてさえ忠実すぎるほど忠実なあの人が、この遠国の旅路で、わたしたちをはぐらかしたとしたら、その心配と、狼狽が思いやられる。ところが、いくら心配しても、狼狽しても、わたしの行方が絶望となった日には、あの人のしおれ方が思いやられるばかりでなく、おそらく、ひとりで無事に故郷へ帰る気にはなるまい。

お雪はこのことの思案だけで、かなり頭が疲れ、旅の仕度も手につきませんでしたが、久助さんはいい気なもので、明日の出立の日和を見たり、これから飛騨の高山から、美濃の岐阜へ出て東海道を下るか、そうでなければ木曾路へ出て、ゆるゆると故郷の上野原方面へ帰ることを、若い時、伊勢参りの思い出から、子供のように喜んで、お