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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
30 畜生谷の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页
おれをおっぽり出して外泊するなんてえことは、まさに一大事でなければならねえ、何か間違いが起りはしねえかなあ。間違いが起ったとしても、あいつのことだから、自分が怪我をするようなブマなことはねえにきまっているさ、だが、気が短けえし、人間の見境がつかねえから、むくれ出すと手におえねえ――なんにしても、こいつはこのままじゃあおけねえ、今までは道庵がずいぶんあの男に世話を焼かせたが、今日はどうしても、こっちがあいつに世話を焼かせられる番だ。さあ、こうしちゃいられねえ」
道庵は狼狽して飛び起きざまに、いきなり次の間の戸棚をあけて、もしやと調べてみたが、戸棚の隅にも、火鉢の抽斗にも、わが忠実無二の保護者たる宇治山田の米友の、影を見出すことができませんでした。
三十一
その夜、宇治山田の米友は、鳴海の宿の旅籠屋の一室で、何かの物音に、ふと夢を破られました。
夢を破られて見ると、自分というものが、蒲団の上には寝ていないで、こちらの方の大きな熊の皮の上に、仰向けに、大の字なりに寝そべっていることを知りました。
大抵の場合に於て、この男は、素肌に盲目縞の筒袖一枚以上を身に纏うことを必要としないように出来ているし、夜分に於ても、それ以上の夜具があってもよし、なくてもよいことになっているが、今宵の場合は特に疲れが