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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

忠作に向ってこんな追従を言いました。

忠作をつかまえて、若くて頭がいいと持ち上げるのは、必ずしも過当とは思われないけれど、ペロがいけるとか、いけないとか言うのは、会話が出来るとか、出来ないとかいう意味で、忠作としては、金公が推薦するほど会話が出来るわけではないが、敏慧なこの少年は、ここへ来て僅かの間に、もう朝夕の挨拶や、簡単な用向などは、用の足りるほどに外国語を聞きかじり、覚え込んでいる程度です。それが金公あたりの眼から見れば、確かに非凡過ぎるほどの非凡の頭に見え、もうこの少年に頼めば、立派に通弁の役に立ち、異人との交渉は一切差支えなくなっていると見えるほどに、買いかぶってしまっているらしい。

結局、金公の用向は、洋妾立国論を一席弁じた上に、洋妾両三名を西洋人に売り込むことの周旋方を、忠作に頼み込みに来たのだという要領だけで、ビールの壜を傾けつくし、ほろよい機嫌でこの室を出て行ってしまいました。

三十二

誰も、金公の話なんぞを取り上げて、あげつらうものはないが、それでも忠作は、忠作として考えさせられるところのものがありました。軍艦であり、鉄砲であり、羅紗であり、器械類であり、外国から買うべきものは無数にあるのに、外国へ売るべき物はなんにも無い――洋妾にもとで要らずで稼がせるほかに良策は