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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

そこを、百と清次は悠々として通過しながら会話をしました。

百の方は用心して、なるべく関東弁を出さないようにしているので、清次はいいことにして、山言葉、里言葉を、ちゃんぽんにして、しきりにはしゃいでいるのです。

清次はこう言いました、

――わしも、いつまでもこの飛騨の山の中に暮す気はござんせん、京大阪の本場へ出て一旗あげるつもりでございやす。

やっぱり向うへ行っても、当座は紙屑買いをするよりほかは心当りがござんせん。

だが、紙屑にもよりけりで、高山の紙屑なんぞは、高いと言ったところでせいぜいお代官の年貢帳ぐらいなもんですが、京大阪となれば、同じ紙屑にしても、紙屑のたちが違いますから、儲けもたっぷりあるというわけなんでござんしょう。

お公家さん、学者、大商人といったところの紙屑を捨値で買い込んで、これを拾いわけてうまく売り出しやしょう。

ところで、商売は、すべてひろめが肝腎ですからな、つまり宣伝てやつを大袈裟にやらないと、今時の商売は成り立ちませんな。

そこで、捨値で買い受けた紙屑を、これは大納言様の直筆で候の、このほうは大御所様で候の、これはまた少し御安値ではございますが、当時大阪第一の学者――といったように、広告、ひろめ、つまり宣伝てやつでおどかして、ウンと高く売りやしょう。