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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

そこで、美少年からこういって水を向けられてみると、ついムラムラと、

「いい預り手がありさえすりゃなあ」

と、歎息のように答えてしまいました。そうすると、岡崎藩の美少年は呑込み顔に、

「そりゃ、あるとも」

「ある!」

米友はいささか頭を上げて眼を円くして、

「あるったって、香具師じゃいけねえぜ」

「そんな者じゃない」

「だって、お前、馬なら荷物を運ばせたりなんぞして、駄賃をとって、暮しのたそくにするということもあるが、熊はお前、稼ぎをしねえから、飼ったところで食いつぶしだけのもんだぜ。だからお前、やにっこい身上じゃあ、熊あ一匹飼いきれねえよ」

「そりゃ、そうだ」

「それからお前、子供だといったからって、熊は熊だぜ、犬や猫たあ違うんだからな、厳重な檻を拵えてやらなけりゃならねえ、それには家屋敷も広くなけりゃならねえんだ――」

「君の言う、そのすべての条件に叶った飼主――預り主があるのだ、わしに任せてくれないか、で、また必要の時は、いつでも君に返してあげるようにする」

「そう誂向きのところがあればだがなあ」

米友が、まだ半信半疑でいるところへ、岡崎藩の美少年は、次のように事実を証明して、米友の信用に訴えました。